記事: HARIO V60 - PANAMA ABORIGEN / CATURRA LACTIC NATURAL

HARIO V60 - PANAMA ABORIGEN / CATURRA LACTIC NATURAL
今回のレシピは、ラクティック・ナチュラル・プロセスがつくりだすリッチなボディ感と、綺麗でフルーティーな後味の両立を目指して組み上げました。
カトゥーラ種は有機酸がつくられにくく、抽出の仕方によっては酸の印象がぼやけやすい反面、甘さと丸みのある質感が際立ちやすい特性をもっています。そこで、今回は抽出比率を1:14と通常よりも低く設定しています。液中のコロイド密度(フィルターを通りぬけた微粒子の密度)を高め、液体に厚みをもたせることで、より甘さを知覚しやすい状態をつくりました。
もうひとつのポイントは、1分40秒ほどで素早く落としきる抽出スピードです。
後半に抽出される余計なビター感や渋みをカットすることで、雑味のないフレッシュな酸味とリッチな質感が際立ちます。
ラクティック・ナチュラル・プロセスによるなめらかで濃密な口当たりと、穏やかなフルーツ感をお楽しみください。


Origin
今年の買いつけのためにパナマを訪れた際に、ヴォルカン地区で開催された「Panama Highland Treasure」というコーヒーフェスに参加しました。そこで出会ったガト・グランデ・コーヒー・フォレスト農園のゲイシャに感動し、商談を交わしていたときに「カトゥーラもあるよ」と手渡されたのが、同農園の生産者が手がけるアボリヘン農園のコーヒーでした。
サンプルを試飲すると、クリーンでありながらナチュラル・プロセスらしいフルーティーなフレーバーをしっかりと感じられる、素晴らしい味わいでした。今回の買いつけでは一定以上のボリュームのロットも探していたこともあり、その場で購入することに決めました。
購入に至った最大の理由は、カトゥーラ種にありがちなサワー感やグリーン感がうまく抑えられていたことです。
カトゥーラを含むブルボン系統の品種は、成熟に多くの日照エネルギーを必要とします。そのため、日照が不足する地域では実が十分に成熟しきらず、グリーンやハーブといったネガティヴな前駆体の印象が残ってしまい、クリーンカップを阻害する要因となります。
その点、パナマのヴォルカンは、中米のなかでも気候が安定しており、多くの日照量が得られる地域といえます。パナマでは北東から南東に向かって貿易風が吹きますが、ヴォルカン地区は、南西側に雲を堰きとめるほどの山をもたない地形をしているからです。つまり、北東側の山を越えてきた雲が太平洋側へとスムーズに流れ去るため、長い日照時間が確保されているのです。
また、日照量のほかにも、カトゥーラが未成熟になりがちな要因として、高収量品種であることがあげられます。実を多くつけるカトゥーラは、成熟に大量のATP(アデノシン三リン酸)を必要とし、その ATP をつくるためにも多くの「リン」が不可欠となります。
中米にひろくみられるサブダクション系の土壌(プレートの沈み込みによって生まれた火山性の土壌)は、ミネラルバランスに優れるものの、高収量品種の旺盛なエネルギー消費量を満たすにはリンが不足しがちです。
しかし、パナマの土壌は、地下深くからマグマが上昇するガラパゴス・ホットスポットに起源をもち、リフトバレー(地殻が引っ張られて裂けることで生じる地質構造)とサブダクションの「合いの子」ともいえる特殊な地質構造をしています。他の中米地域とは異なる特徴をもった土壌には、マントルから直接もたらされるマグマ成分によって極めて豊富なリンが含まているのです。
カトゥーラは、1970年代以降、その収量の多さから中米全域に爆発的に普及し、かつての中米におけるコーヒー生産の主力を担っていた歴史的な品種です。しかし、2012年に中米を襲った深刻なさび病の蔓延を境に、栽培管理の難しいカトゥーラを、より強健なハイブリッド品種へと植え替える動きが急速に進行し、現在では、中米の主要な栽培現場からは退きつつあります。
他の中米地域では維持することさえ難しくなってしまったカトゥーラ種ですが、パナマのヴォルカンには、豊富な日照とリンという、この品種がもつポテンシャルを余すことなく引き出す環境が整っています。ぜひ、その味わいをお楽しみいただければと思います。
(佐藤)

Roast
今回のパナマ/アボリヘンのカトゥーラは、クリーンな甘さとしっかりとしたボディ感を最大限引き出すプロファイルで焙煎しました。
焙煎の序盤と終盤はアンダーにならない程度に火力及び排気を抑えて焦げを抑制し、中盤のガラス転移(内部構造が柔らかく変形しやい状態に移り変わる現象)が起こるタイミングで火力をかけ、適切な発達を促します。
また、今回は甘さとボディ感を際立たせるために DTR(全体の焙煎時間に対して、発達段階の時間が占める割合)を約20%と、ウッドベリーの他の浅煎りの銘柄と比べて長めに設定しています。
通常、DTRを高く設定することは酸の消失につながります。とくにカトゥーラは品種特性上も酸が穏やかなので、その傾向が顕著にあらわれます。しかし、アボリヘンのカトゥーラは、ラクティック・ナチュラル・プロセスが生み出す風味によって、それでもなおしっかりとした果実感も両立できています。
(今川)








